Sun Glitters – Scattered Into Light (AY033)

sun-gritters-Scattered Into Light

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Sun Glitters – Scattered Into Light
01.When The Train Comes
02.Soft Breeze
03.I, You, We… Know
04.Three, Four Days
05.Closer To The Sun
06.Lonely Trip
07.Scattered Into Light
08.Only You
09.And The Sun Goes Down
10.Feeling Young
11.Too Much To Lose (Acoustic Version)
12.Tell Me, Why You *
13.I Tear You Apart *
14.Fading Days *
15.Here It Comes *

※12-15は日本盤のみのボーナストラック
Japan Only Limited Edition.

8th January 2014
Licensed from Mush Records

税込価格1,890円(送料無料)※先着で特典ステッカー付




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Tower Record
ディスクユニオン(先着で特典ステッカー付)
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Sun Glitters『Scattered Into Light』によせて

チルすることで疎外されるもの)

チル(アウト)すること、とはアフタアワーズ・ミュージックとしての意味も孕み、要はクラブで明け方に聴く、アンビエント、ダブ・ミュージックが心地良いと感じ、微睡むように一晩の疲れを解すことが出来る、そんな感覚を持った人は居るかもしれない。ハイ・プレッシャーな音圧で心身を震わせながら、ふと訪れるその箱の中での熱気から何歩か下がり、壁にもたれてみる時間。

そんな時間は決して箱の中に限られた特別なものではなく、朝、職場へ向かう途中、缶コーヒーを買うことでメリハリができるように、夜、寄り道で本屋で想わぬ新刊で胸躍るように、日々が続くことで波は浮かぶ。そのチルとウェイヴが結びついたチルウェイヴという言葉はだからこそ、ネット状の葉脈を辿り、回収されていったという皮肉も出てきてしまう。

別称的に、ヒプナゴジカル・ポップと記名化されたのは思えば、2010年代に入って、インソムニア予備軍が世界中で地表化している証左だったのだろうとも感じる。インソムニアの原因は明日への不安から、天災まで数え切れない理由はあるだろう。こんなご時世に平穏に一夜を過ごし、朝を迎えるというのは貴重で掛け替えのないことでもある。

しかし、チルウェイヴは「連帯」と「拓かれること」を拒否した。何故ならば、それぞれがコミュニティに属することは拒否するベッドルームでのツイート的なところから始まった訳で、そこでムーヴメントに結びつけるための導線はなく、断線があり、アーティスト個人のインソムニアを宥めるための処方箋だったかもしれないからだ。

チルウェイヴは浮遊する肉体を求める)

チルウェイヴの潮流とは、目立ったものでは結果的にソウル、R&Bと共振し、裁断化された優美な電子音、エレクトロニカ越しに微睡みを誘うようで、聴き手の目を醒まさせることになった。浮遊する肉体性の奪還といおうか、当たり前だが、エスケーピズムやドラッギーなサイケデリアでトリップしていても、醒めれば、そこには生々しい現実が立ちはだかっている。

トロ・イ・モワ、ユース・ラグーンやウオッシュド・アウトの新作を思い起こせば、早いように。そして、その芳醇たる結実であり、あくまで途程がこのSun Glittersの待望の新作『Scattered Into Light』にはある。いつかの妖艶さを内破しながら、カテドラルでの残響みたく音が乱雑に彩射される。イタリア出身のフィメール・ボーカリストSARAとのコラボレーション曲も作品自体に不思議な立体感とセクシャルな蠱惑性をもたらせている。

誘惑する窓越しの、斜光)

2011年のデビュー・アルバムから彼のサウンドをしてよく称されたウィッチ・ハウスとチルウェイヴの折衷性とは、基本はネット状の一定規則のつながりの稀薄さがもたらせた引き裂かれた便宜上のタームだった。ウィッチ・ハウスというのも、ネット上で気化、消費する速度とカテゴライズは曖昧で、ゴシック的な部分だけ注視された気もしたが、そこでのバラム・アカヴなどのアーティストは次へと向かっているのだろう。

そこで、このルクセンブルグ出身のこのヴィクター・フェレイラのソロ・プロジェクトは現実へと降りたような感触を受ける。ただ、地に足をつけている訳ではなく、ある種の現実逃避には現実が甘美な頽廃主義(デカダンス)が後景化してしまい、その内側に耽溺し、自己完結になりがちだからだ。だからこそだといえるかもしれない、ノスタルジアと窓から差す光の角度、斜度を調整するように、音楽の眩しさをあえて遠望化する。例えば、「Closer To The Sun」の歪み次第で斜光度が変わるような巧みな構成。「Feeling Young」ではIDM初期の丁寧な箱庭感がある。

EDM全盛の中で、これだけ幻惑とサイケデリックの狭間を素面で駆け抜ける覚悟は浮くかもしれない。しかし、今、情報量が過剰だけであったり、速度の早さに音楽に埋もれてしまいがちな中で、2014年はこの作品のようにテンポを落として、静かな足取りで始めてゆくのもいいとも想う。

夜明け前の、朝が視えない暗がりが静謐にほのかに明るさを孕んでゆく微差の時間を閉じ込めたようなディーセントで充実した内容だと思う。

松浦 達(COOKIE SCENE)
http://d.hatena.ne.jp/satoru79/