N.O.R.K. – ADSR (AY037)
1.The Fall
2.Yell Out
3.Offense
4.Umbrella
5.The Fall(HNC Fugue and Her Rosary Mix)
6.Yell Out (Lady Citizen Remix)
7.Offense (Licaxxx Remix)
Release data:14th May 2014
現代アートや音楽文化への興味から、音楽を中心とした芸術表現の場を設けようと、小袋成彬と國本怜の現役大学生2人によって 2013年10月に結成される。ミニマルかつ流麗なビートメイクと How To Dress Well等を彷彿とさせる中性的なファルセットが特徴的。退廃的なミュージックビデオとフリーダウンロードでの楽曲配信が話題を呼び、結成後数ヶ月で各種音楽ブログや全国的なカルチャー紙に取り上げられるなど、唯一無二な音楽性のみならず徹底したビジュアル作りや若者文化の前衛として注目を集めている
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“ベッド・イン”のまえの、式礼に
―N.O.R.K.が描く艶美の淵文=松浦 達(評論家)
1)届かない聖域での愛の結い目
1969年におこなわれたジョン・レノンとオノ・ヨーコの“ベッド・イン”とは具体的なポリティカル・アクションだった。(世界)平和のために、恋人同士の愛し合う姿をステイトメントすることで世界中に届かせようとする意思から演繹された具象性として、レノンとヨーコというイコンの認知が汎的になされていたようなところがあった。
今は、匿名的にファッショナブルに性的戯礼としてハイセンスなR&Bが日本のみならず、世界各地で流れている。たとえば、ファレルやスヌープ・ドッグ、ロビン・シックが多くのフォトジェニックな女性を周りに寄せ、プール、豪邸、多民族、ログハウス、ストリートという記号を用いるのは「成り上がった」結果の“さいはて”ではなく、かのブリトニー・スピアーズでもMVで城を作り、一般的な人たちでは届かない仮想のサンクチュアリで彼女はパーティーを繰り広げる虚無的ななにかも包含する。
しかし、昨年のRHYEもそうだが、照度の低い中、じわじわとポスト・AOR的といってもいいだろう、アーヴァンでスムースなR&Bを奏でるアクトが増えてきている。そこで、感じるのはニューソウルへの経緯、ヒップホップとのエクレクティックなセンス、音響工作の細部への意思と、セクシャルな蠱惑が眼前としている。フリー・ソウルや編集の妙で成り立つというよりは、もっとダイレクトにダイナミクスが帯びている。
なお、このN.O.R.K.(ノーク)は91年生まれの男性デュオで、2013年10月、大学生の時代に結成されており、デカダンなMVやエレガントなトラックですでに注視は集まっている。フリーダウンロードも果敢に行なっており、その評価も高い。
2)コスモポリタニズム的に、
なお、このデビューEPとなる『ADSR』では、サヴモーション・オーケストラ(Submotion Orchestra)、ジェイムズ・ブレイク(James Blake)、または、バラム・アカヴ(Balam Acab)辺りの重くも不穏にして、華麗なステップ以降のビート・メイクと、モータウン、ニューソウルへの畏敬を経た都市でのソウル・ミュージックの再構築を挑んでいる節がある。過去にSoundcloud、You Tubeなどで発表したオリジナル曲を入れると、4曲、さらに、リミックスが3曲。
コンパクトとも言えるが、内容としては非常に拡がりがある。冒頭の「The Fall」から引き込まれる幻惑性とセクシャルな空気感。ストリングス、ピアノ、硬質なビート、ファルセットの声、残像を活かす音、アンビエンスまで時代錯誤ではなく、今を見据えている。
これが、クラブ、フロアーのみならず、たとえば、渋谷センター街で一般的なEDMと並んで流れるという絵図は容易に想像できる。個人的には、一部メディアで、How To Dress Wellとの比較があがっているが、もっと仮構化された都市への求心性の強いアーバン・ミュージックという印象がある。Lady Citizenによる「Yell Out」のリミックスを聴いていると、尚更、コスモポリタニズム的な世界中の遍く夜を思うからだ。
夜にカームするための、チルアウトするための、音楽というにはまだデビューEPの時点では確定できない。
しかし、こういったアクトが日本から出てきたというのはこれからの展開に期待を仮託するには迷いはない。“ベッド・イン”のまえには、こういった音楽が衣擦れのように聞き手の感情を揺るがす気がする。
Media
Spincoster
FUXX THE HYPE
peak silence
EYESCREAM 2014年4月号(今聴くべきNEW GENERATION)